外食新聞の川端編集長による「2012年 食の10大ニュース」

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外食新聞の川端編集長による「2012年 食の10大ニュース」が、

Food Watch Japanに掲載されています。

 

参考になるので、ご紹介します。

 

Food Watch Japan

 http://www.foodwatch.jp/tertiary_inds/16568

 

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  • 【1】立ちフレンチ、イタリアン熱狂
  • 【2】「朝食」市場への注目高まる
  • 【3】定食業態の伸び顕著
  • 【4】郊外ロードサイドに異変
  • 【5】低価格ピザ業態の増殖
  • 【6】高速SAへの外食進出顕著
  • 【7】大型商業施設の開設ラッシュ
  • 【8】海外進出より活発化
  • 【9】肉業態の増殖加速
  • 【10】「泡」「極冷」 ビール新提案と「モヒート」が人気
【1】立ちフレンチ、イタリアン熱狂

 これは言うまでもなく、2012年に一大旋風を巻き起こしたバリュークリエイトの「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」だ。

 そもそもこの業態は、同社の豊富な資金を背景に、「打倒! 魚金」を目指して開発されたもので、新橋を皮切りに銀座や恵比寿など大都市圏に出店を進めた。本家の魚金はすでにバルやビストロに加え、イタリアン業態の「ウオキン・ピッコロ」を2店舗(新橋と銀座)出店しており、「俺フレ」「俺イタ」の出店後も、その影響もなく人気を集めて続けている。

「俺フレ」「俺イタ」のモデルは人件費、食材費、家賃のどれもが高い「高コストオペレーション」。これを客数(回転)で補うという究極のモデルで、その部分が今後弱点としてどう露呈してくるのかが懸念材料だ。

 対して魚金は、集客力は同レベルにもかかわらず、人件費、食材費とも「俺フレ」「俺イタ」ほどは高くないと見られることから、収益構造が大きく異なる点が強みだ。

 バリュークリエイトは2013年には1月早々から和業態の第1弾として東京・蒲田に「俺のやきとり」の出店を予定しており、今後もどういった動きを見せるか、目が離せない。

【2】「朝食」市場への注目高まる

 火付け役はもちろん、ハリウッドセレブから愛され各国のメディアが「世界一の朝食」と取り上げた「bills」(ビル・グレンジャー氏のオーナーレストラン)。シドニー市内に3店舗展開し、日本でもオーストラリア同様に運営はトランジットジェネラルオフィスが行う人気の店だ。名物は「オーガニックスクランブルエッグ」と「リコッタパンケーキ」。日本でも「素敵な朝食=パンケーキ」のトレンドを作ったのがこの「bills」と言えるだろう。

 また、同時期にハワイの「Eggs’n Things」も日本法人「EGGS‘N THINGS JAPAN」を設立して上陸。パンケーキではないが、まさに朝食ニーズを狙ったバルニバービの「グッドモーニングカフェ」も2010年4月に東京・千駄木に出した1号店が好調なことから、2012年10月には中野に2号店を出店した。

 その後も、朝食を楽しめる店舗は増殖し、東京プリンスホテルのベーカリーレストラン「LE Pain QUOTIDIEN(ル・パン・コティディアン)」芝公園店、代官山のカフェ「IVY PLACE(アイヴィ・プレイス)」などが次々とオープン。11月にはWDIが新宿のルミネ2にニューヨークのカジュアルレストラン「サラベス」の国内1号店を出店し、俄然盛り上がってきた。「パンケーキ朝食文化」を巡る陣取り合戦は第2ラウンドに突入し、2013年も熱く続きそうだ。

【3】定食業態の伸び顕著

 フジオフードシステムの展開する「まいどおおきに食堂」をはじめ、今密かに人気を集めているのが、定食業態だ。既存店売上高は各社ともに好業績で、中でも「まいどおおきに食堂」は2010年10月から2012年11月まで、既存店が26カ月連続で増収を続けている。好調要因として丼ものを中心とした和風ファストフード(FFS)と競合せず、定食業態の競合が少ないことが挙げられる。

 各社とも商品面強化に取り組み、集客力を高めていることも奏功しているようだ。「まいどおおきに食堂」以外でも、同一業態の2012年度の既存店売上高は好調で、「大戸屋」「やよい軒」とも累計でプラス推移が続いている。

 この動きを受けてゼンショーホールディングスは和食業態の実験をスタート。和食ファミリーレストラン(FR)「華屋与兵衛」のカジュアルタイプとして「和食よへい」を開発し、実験店舗を11月13日、埼玉県狭山市に出店した。同社では「あくまでも実験店舗という位置付け。若い世代を集客できる和食業態として検証したい」と考えているが、このジャンルでもゼンショーが本格参入となれば牛丼業界同様に、一段とヒートアップしそうな気配だ。

【4】郊外ロードサイドに異変

 ファミリーレストランが撤退した後にステーキハンバーグ&サラダバー「けん」が次々と出店。そして次のステージは、それに追随する格好ですかいらーくが「ステーキガスト」、ロイヤルが「カウボーイ家族」の多店舗化を開始。他のハンバーグ業態もサラダバーやカレー食べ放題などのセットメニューを導入して、「けん」の強みを封じ込める作戦に出た。

「けん」を展開するエムグラントフードサービスは、すでに「けん」以外の業態の開発を進めていたが、愛知県でオーダーバイキングイタリアンの繁盛店「ヴォーノ・イタリア」と業務提携し、関東圏でのエリアフランチャイザーの権利を獲得。関東圏には、郊外型食べ放題の強い業態がないことから、エムグラントフードサービスは積極的に「ヴォーノ・イタリア」の出店を進めている最中だ。

 この「ヴォーノ・イタリア」に対し、今度は居酒屋業態がメインのかもんフードサービスが同様のコンセプトである「わいわい食堂ピッコリ」で郊外型食べ放題イタリアン市場に参入するなど、ロードサイドの構図がこれまでとまた変化してきたのが2012年の特徴だ。

 そして、ロードサイドには喫茶業態の大手も熱い視線を送る。「コメダ珈琲店」が1000店舗体制を狙う一方で、「スターバックス」もドライブスルー型の郊外店を増店中なのだ。さらにドトール・日レスホールディングスの「星乃珈琲店」も郊外喫茶需要を狙う。

 ロードサイド市場は2013年も引き続きビュッフェや喫茶業態を中心に大きな変化が起こると見られるだけに、注目だ。

【5】低価格ピザ業態の増殖

 エムグラントフードサービスが「CONA 凹」「VOCO 凹」のブランドで窯焼きピザを500円で提供する低価格ピザバル業態を開発し、ジャンルを確立。その後、窯焼きナポリピザの低価格化は進む。1枚280円から食べられることで人気になった東京・高円寺の「センプレピッツアダジョヴァンニ」が、1号店の好調を受けて2012年4月には東京・阿佐ヶ谷に2号店を出店(運営会社はBuonaVita)。

 こうした流れを受け、再びエムグラントフードサービスが動いた。1枚350円から提供するピザのFFS「ナポリス」の出店を加速するために、8月に同チェーンの遠藤商事と合弁会社を作った。店内で延ばした生地を独自のガス窯で焼き上げるスタイルで、1年間で100店舗を展開する、と鼻息は荒い。ともかく、この低価格ピザ戦争は着火したばかりだが、2013年に向けて大きな動きになっていくとみられる。

【6】高速SAへの外食進出顕著

 高速道路のサービスエリア(SA)では、大手外食企業を中心に、最近では中堅企業にまでフードコートへの出店熱が波及。従来の一括受託型から、複数の店舗がテナント出店するフードコートの設置事例も増えてきた。フードコート対応の業態を持たない外食企業も、業態開発を進めることによって高速道路SA内に進出し始めたのだ。

 この背景には、高速道路SA運営の民営化に伴う施設の拡充がある。最近では、高速道路の利用者に留まらず、一般道からも乗り入れ可能な施設が増加。アミューズメント施設の設置や土産もの以外の物販店舗も増加し、従来の休憩需要だけでない利用動機を拡大していることから、施設内にある外食店舗の出店も多様化する傾向が強い。

 フードコート型店舗は自前の客席を持たないため、通常の店舗よりも初期投資額が低く、運営時の人員も少ないといった利点もある。高速道路SA内という閉鎖商圏のため、競合の影響や価格競争の影響を受けにくいことも出店を後押しする要因の1つだ。

 4月中旬には、力の源カンパニー、WDI、サッポロライオンといった外食企業がフードコート型店舗を開発して高速道路SA内に初出店した。

 力の源カンパニーは初のフードコート業態「IPPUDO NOODLE EXPRESS」を開発。4月14日には新東名高速道路のNEOPASA(ネオパーサ)静岡SA(上り線)に初出店した。

「丸亀製麺」を展開するトリドールも、4月14日に開業した新東名高速道路藤枝PA上下線のフードコートを一括運営。また、「WIRED CAFE」などを展開するカフェカンパニーも、昨年3月から館山自動車道・市原SAを一括運営するなど、規模の大小を問わずSAフードコート内への出店や運営が急だ。今後もこの流れは強まると見られ、業態開発に長けた外食企業へのプロデュースや運営受託の依頼が増えそうだ。

【7】大型商業施設の開設ラッシュ

 大阪のヨドバシ梅田、ダイバシティ東京プラザ、ヒカリエ、10月の「GEMS(ジェムズ)渋谷」などなど、大型商業施設が再び開設ラッシュだった。

 これらの特徴は、それまでの商業施設“常連組”とも言われる外食企業から、新興の外食企業へとテナントが変化してきている点。リーシング(テナントを探して誘致する)をしているある業者も「“地方の光る店”や小さくても繁盛店を持っている伸び盛りの若手経営者の店に出店を促して、商業施設としての差別化を図りたい」としている。その言葉どおり、新興勢力の外食企業がビッグネームの商業施設に出店するケースがぐっと増えた1年だった。

 この傾向は来年以降も続くと見られ、さらに地方のベンチャー企業にどんどんスポットライトが当たっていくケースが増えそうな流れだ。

 

【8】海外進出より活発化

 2012年6月、人口約12億人の巨大市場・インドに進出したのが、そば・うどん大手の家族亭。日系外食企業にとって全くの未開拓市場と言ってもいいインドへの出店に当たり、主力のそば・うどん業態ではなく、スイーツ専門店の「Harajuku Delights」を開発して業界関係者を驚かせたのは記憶に新しいところだ。

 そのほかにも、WDIがマレーシアの商業施設内に「カプリチョ―ザ」3店舗を出店した。マレーシアは人口の6割以上をイスラム教徒が占め、東南アジア諸国の中でもハラル(イスラム法上の可食物。酒や豚などの禁忌がある)の厳格さで知られるが、WDIはアジアや欧米といった世界各国に店舗展開を進める中で、初めてハラル認証を取得した国がマレーシアであった。「カプリチョ―ザ」は現地の中間所得者層や富裕層、日本人、中東からの観光客などをメインに集客している。

 WDIはシンガポール1号店も4月に出店するなど、アジアでの展開が急だ。アジアではなくアメリカに出たのはダイヤモンドダイニング。ニューヨークに昼はラーメン店、夜は居酒屋の二毛作業態で出店した。

 また、トリドールは、1月にタイに1号店を出店したほか、3月には上海に中国1号店を、そしてロシアでの展開をにらんで現地法人を設立した。いずれも各国で3年以内に100店舗の出店を目指す。2月に香港に現地法人を作り11月に「かつや」海外1号店を出したのは、アークランドサービス。力の源カンパニーは台湾で合弁会社を作り、5月に1号店を出店。

 APカンパニーも10月に「塚田農場」のスープ・ラーメンバージョンとして、「塚田農場 美人鍋」を出店。この「塚田農場」は非アルコール業態だが、あっという間に連日行列ができるほどの大人気店となるなど、同社の非アル業態に明るい道筋を付けた格好だ。

 また、9月には「備長扇屋」や「日本橋紅とん」をプロデュースしたことで知られる山本浩喜氏が、現地人向け施設として、タコ焼きを始め日本の“B級グルメ”を集めた屋台横丁式フードコート「TOKYO TOWN」をベトナムにオープンして話題を集めた。ベトナムでは、コロワイドもハノイに居酒屋「NIJYU MARU」で進出している。

 大手中小を問わず、海外進出がこれまで以上に熱を帯びてきた。

【9】肉業態の増殖加速

 ワイン人気から派生して“肉バル業態”も増殖。その中で注目を集めつつあるのが熟成肉だ。

 ユッケの販売がかなり厳しくなり、その厳しい規制下でも店舗を整備するなどしてユッケ販売にこぎ着ける店がある一方で、ユッケは馬肉とし、ステーキなどは熟成肉で差別化する動きが出始めたのが今年の特徴と言える。

 肉の熟成には技術を要するため、店の個性が打ち出しやすい一方で、歩留まりの悪さや衛生管理面などのハードルも高い。安易にベンチマークしても集客にはつながらないが、「おいしい肉をより安く」といった潜在ニーズを捉えた店はオープン間もなくでも繁盛しているようだ。

 熟成肉を牛肉にとどまらず、豚肉や鶏肉、ジビエにまで広げている店も出てきており、今後は「肉をおいしく食べてもらう」ために「何の肉のどの部位をどれくらい熟成させるのか」といったステージへとさらに枝分かれしていくだろう。

 また、肉業態でもう一つ注目を集めたのが、スモーク。本格的なスモークメーカーによるものから、焼き石にチップをのせて瞬間的に燻す簡易スモークまで、店、料理に合わせてアレンジする動きが目立ったようだ。

 郊外ではステーキ業態が増えたことにより、ステーキ市場も拡大。今後、郊外ステーキ業態の間でも、単なるステーキではなく何らかの付加価値を付けつつもリーズナブルなプライスを維持する動きが活発化するだろう。

【10】「泡」「極冷」 ビール新提案と「モヒート」が人気

 アサヒビールの〈スーパードライ・エクストラコールド〉のヒットを受けて、キリンが2013年から導入したのが〈キリン一番搾りフローズン生〉だ。泡のみ凍結させて通常の生ビールに被せるといったユニークな形態もうけ、アサヒの〈SDエクストラコールド〉と並び一躍人気商品となるなど、業務用市場においては「ビール復権に向けた非常に前向きな取り組みだった」と評価の高かった提案だ。

 ドリンクでもう1つ耳目を集めたのが、サッポロビールが〈バカルディ〉ブランドで仕掛けた「モヒート」だ。洋業態には通常のラムベースのモヒートが、例えばワイン業態では居酒屋のカクテルやチューハイ感覚で置かれ、利益面でも貢献度が高いことから店側の取り組み意欲も高かった。和風店では焼酎をベースに大葉などを使った「和風モヒート」も浸透し、和洋問わず一気に広がった印象だ。2012年を象徴するドリンクはこの3品だろう。

 

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